単位時間歩数の臨床応用例
時間内歩行試験が呼吸器疾患や循環器疾患患者などの運動耐容能を調べるために,広く臨床適用されている.時間内歩行試験は6分間歩行試験が一般的である.しかし,6分間歩行試験時に酸素飽和度を同時測定・確認するために,験者が被験者の横でパルスオキシメータを視認する必要があった.併歩行すると被験者の歩行ペースが験者の歩行ペースに影響されることがあった.この問題点を解決するため,短距離通信(Bluetooth)を用いてパルスオキシメータの情報を市販のタブレットに表示させるシステムを開発した.それが,「Anypal
Walk」である.
これに加えて,COPD患者は6分間歩行試験時に息切れによって歩行停止することがある.歩行停止に関して評価法が少なかった.臨床的課題を解決するために,単位時間歩数を考案した.以下に応用例を説明する.(「Anypal
Walk」は酸素飽和度,脈拍数だけではなく,3軸加速度計を内蔵しているので歩数,単位時間歩数を表示可能である)
単位時間歩数を利用すると,
・被験者の歩行パターン・歩行ペースが直感的に把握できる
・歩行試験中の停止が分かる
1.健常高齢者とCOPD患者の違い
縦軸に単位時間歩数,横軸に時間をとって時間推移を描写する.
健常高齢者は,平均1秒間に2歩進む.一方COPD患者は1秒間の歩数が小さく,中途で息切れのため休憩して単位時間歩数が0になっている時間帯があるのが分かる.
歩行停止すると単位時間歩数の変動係数が大きくなる.
2.短時間作用性気管支拡張薬,プロカテロールの吸入前後の歩行パターン,歩行ペースの違い
歩行パターンの違いが直感的に分かる.
上記症例では,プロカテロール吸入によって動的肺過膨張が改善し,歩行停止がなくなり6分間歩行距離が延びたと思われる.
縦軸を累積歩数にすると歩行ペースが客観的に分かる.歩行停止以外では傾きが吸入前後でほぼ同じであり,客観的に6分間歩行試験が行われたと推測される.
歩行停止以外の「累積歩数-時間」の傾きが吸入前後で大きく異なっている場合,6分間歩行試験に何らかの外的要因が加わった可能性も疑うべきである.